機能電極界面を用いた金属タンパク質の電子移動反応速度制御因子の解明と機能解析

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11450329
• 研究機関: 熊本大学
• 研究代表者: 谷口 功 熊本大学, 工学部, 教授 (90112391)
• 研究分担者: 冨永 昌人 熊本大学, 医療技術短期大学部, 助手 (70264207) ; 西山 勝彦 熊本大学, 工学部, 講師 (10202243)
• キーワード: 金属タンパク質 / 生体機能電極 / 単結晶電極 / 界面構造 / 電子移動反応 / ミオグロビン / フェレドキシン / アミノ酸変異分子

研究概要

本研究では、原子・分子レベルで制御された機能界面を用いて、金属タンパク質分子およびその改変・変異分子を用いて、その電子移動反応に及ぼす支配制御因子の詳細の解明とその応用を目的としている。本年度は、以下のような研究成果を得た。
1.熱安定性に優れたクロレラフェレドキシンを抽出・精製し、特に、ポリリジン薄膜の中に酵素(FNRなど)と共に取り込むことで、人工光合成反応が可能な金属タンパク質固定化酵素機能電極の作製に成功した。
2.金属タンパク質の電子移動のための機能化表面について、単結晶金電極表面を用いて機能表面の構造を分子レベルで明らかにした。特に新しい機能化分子として、3-ピリジンチオール(3-PySH)を見出し、その表面構造を原子解像のプローブ顕微鏡観察および表面増強ラマンおよび赤外分光法、さらに表面の親水性評価法などを用いて解析した。金属タンパク質の機能化表面での電子移動のメカニズムの一端を解明すると共に、金属タンパク質が要求する機能化表面の性質がシトクロムcとアズリンでは異なることを実証的に示した。
3.軽水及び重水中で、機能電極上でのミオグロビン及び変異分子、ミオグロビン機能シトクロムb-562などの電子移動速度の測定から、電子移動反応速度制御因子として、1)電子移動活性中心周辺の構造、特に、水分子のネットワーク形成(電子移動過程に伴う分子の再配列エネルギーの増大による電子移動速度の低下)、2)中心金属イオンの電子移動速度の大きさ、3)電極面への金属タンパク質分子の配向などを明らかにした。
4.金属タンパク質電子移動制御機能素子としての合成ペプチド固定化機能電極の作製方法の開発や、機能分子を介して金属タンパク質を固定化した電極を用いて、電極と金属タンパク質の酸化還元中心との距離に依存した電子移動速度の関係を明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Taniguchi,Isao: "Simple methods for preparation of a well-defined 4-pyridinethiol modified surface on Au(111) electrodes for cytochrome celectrochemistry"Electrochim.Acta. 45(18). 2843-2854 (2000)
• [文献書誌] Sawaguchi,Takahiro: "Voltammetric and In Situ STM Studies on Self-Assembled Monolayers of 4-and 2-Mercaptopyridines and Thiophenol on Au(111) Electrodes"Electrochim.Acta. 45(18). 2861-2868 (2000)
• [文献書誌] Li,Chen-zhong: "Electrochemical and spectroelectrochemical studies on cobalt myoglobin"Electrochim.Acta. 45(18). 2883-2888 (2000)
• [文献書誌] Mie,Yasuhiro: "Effect of rapid heme rotation on electrochemistry of myoglobin"Electrochim.Acta. 45(18). 2903-2910 (2000)
• [文献書誌] 谷口,功: "ポイントミューテーションによるタンパク質の電子機能の改変"電気化学. 68(5). 341-347 (2000)
• [文献書誌] Yoshimoto,Souichiro: "Direct Obserbation of Structural Change Induced by Redox Reactions of Bis (2-anthraquinyl) disulfide SAM on Au (100)-(1x1) by in situ High-Resolution STM"Langmuir. 16(10). 4399-4404 (2000)
• [文献書誌] Ohira,Akihiro: "Formation of the "nanotube" structure of b-cyclodextrin on Au(111) surfaces induced by potential controlled adsorption"Colloids and Surfaces A : Physicochemiccal and Engineering Aspects,. 169. 27-33 (2000)
• [文献書誌] Taniguchi,Isao: "Bioelectroanalytical Chemistry Using Functionalized Electrodes : Fundamentals and Applicqations"Proc.Workshop cum Seminar on Electroanaltytical Chemistry and Allid Topics(ELAC-2000). 1. 118-23 (2000)
• [文献書誌] Uemura,Shinobu: "Novel "wet process" technique based on electrochemical replacement for the preparation of fullerene epitaxial adlayers"Langmuir. 17. 5-7 (2001)
• [文献書誌] 谷口,功: "電気化学便覧(第9章 生物電気化学:生体内の電気化学反応)"丸善(電気化学会編). 756 (2000)
• [文献書誌] 谷口,功: "触媒の辞典(化学修飾電極、光起電力)"朝倉書店(触媒学会編). 634 (2000)