本研究は液相プラズマという全く新規な反応系を創出し、新しい炭素系無機物質を一段階で直接合成するための手法を開発、確立することを目的とする。従来このような高エネルギー条件下での反応は選択性に乏しいという見解が一般的であったが、本研究はプラズマと液相との相互作用およびそれから誘起される溶液内反応を積極的に活用することで活性種の反応性の制御を実現するものである。 液相プラズマ媒体として水溶液を用い、プラズマ励起により誘起される溶液中の有機成分の酸化分解反応を詳細に検討し、水分子の解離に由来するヒドロキシルラジカルが最も量要な活性種であることを明らかにした。また液相媒体をポリクロロメタンとして、プラズマ分解により生成する炭素質固体の分離精製を試みた。 1.プラズマ生成条件下での液相内有機酸化反応の機構的解明 (1)大気圧直流プラズマを用いてフェノール類の酸化分解反応を検討し、中間酸化生成物を精査した。 (2)酸化活性種の生成速度をヨードメトリーにより定量的に明らかにした。 (3)分解速度に対する反応制御因子の影響に基づく速度論的考察からヒドロキシルラジカルを主要な酸化種とする反応機構を推定した。 (4)交流高電圧をプラズマ源として用いた場合にも同様の反応機構が成立することを確かめた。 (5)プラズマ生成活性種の同定のため発光スペクトルの解析をおこなった。 2.液相プラズマ反応からの活性種を利用する無機反応設計 (1)ポリクロロメタンおよびポリクロロエチレンから高度不飽和結合を有するC1-C6のハロカーボンが生成することを見出した。 (2)プラズマ発生電極上および溶液中に生成する炭素質固体の性状解明のため分離精製を試みた。 (3)超炭素活性種としてラジカルとともにカルベン種の生成が示唆された。
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