研究概要 |
HIVプロテアーゼ阻害剤の合成を目標として、すでに阻害剤として知れている環状ウレアDMP-323の立体構造の情報を基に10員環ジアミドを分子設計した。この化合物は、2,4-ジベンジル-3-ヒドロキシジペンタン酸(1)と1,3-ジベンジル-2-ヒドロキシプロパンジアミン(2)を縮合した分子である。化合物1は相当するビスシンナミル酸のルテニウム(II)-BINAP触媒を用いる均一系不斉水素化により93%ee以上で不斉合成した。ジアミン2は、1のクロチウス転位により得た。これらのアミド化による環化は、直接的あるいは段階的、いずれの場合もダイマー構造を与えるのみに終わった。これは、4つのベンジル基の立体反発のためと考え分子力場(MMFF)計算による立体配座解析を試みたところ、反応点が遠い距離にある配座が優先的に存在していることが明らかになった。そこで想定できるすべての可能な環化前駆体において立体配座解析を行い、9員環ながらアミド化に有効な合成中間体を設計した。すなわち、2の水酸基を利用しとエステル化した後、分子内アミド化による9員環の環化、つづいて分子内でエステルからアミドへの変換を行って、非常に込み合った10員環ジアミドの合成を達成した。
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