研究概要 |
酢酸パラジウム(II)を触媒とし、常圧酸素を酸化剤とするアルコール酸化反応において次の二点を新たに発見した。1)第一級および第二級アルコールをそれぞれ選択的にアルデヒドおよびケトンに酸化する,2)第三級シクロブタノール類を様々な化合物に変換する。 1)トルエンを溶媒に用い、触媒量の酢酸パラジウム(II)と常圧酸素の存在下、様々な第一級アルコールを酸化すると、対応するアルデヒドが高収率で得られた。この反応はピリジンを始めとする有機塩基の存在が必須であった。同様に、第二級アルコールからは対応するケトンがほぼ定量的に得られた。しかしながら、β-位にヘテロ原子(O,N,Sなど)を有するアルコールにはこの触媒反応は適用できず、また、ゲラニオールやネロールなどのアリル位アルコールの反応では対応するアルデヒドが得られたが二重結合部位において異性化が多く見られた。これらの欠点を補うために、酢酸パラジウム(II)の固定化を試み、塩基性粘土であるハイドロタルサイトとまず反応させ、新たにパラジウム(II)-ハイドロタルサイトという固体触媒を合成した。この触媒は再利用が可能であり、また、上記アリル位アルコール酸化において異性化は全く見られなかった。 2)第三級シクロブタノールを上記1)の条件で酸化すると炭素-炭素結合の開裂を伴う様々な有機変換反応が起こった。シクロブタノール上の置換基の種類により、その生成物はβ,γ-不飽和ケトン,シクロペンタノン誘導体,テトラロン誘導体およびシクロプロピルケトンであった。
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