新規平面パイ電子系分子については、ベンゼン環とジアセチレンにより構成された拡張グラファイトの部分構造となる平面パイ電子系分子の合成を目的として、その周辺部分に相当するジエチニルベンゼンの環状4量体および環状6量体を合成した。それらの溶液中での会合挙動について検討するためH^1NMRスペクトルの濃度依存性について調べ、データを様々のモデルを仮定して解析した。またジエチイルピリジンの環状4量体ならびに環状6量体も合成し、それらが溶液中においてジエチニルベンゼン環状4量体および環状6量体とヘテロ会合することを見いだした。 曲面パイ電子系フラーレンの合成に関しては、高反応性ポリインC_<60>C1_6の前駆体となるプロペラン構造を有する化合物を合成し、そのレーザーデソープション法を用いる[2+2]開裂により生成したC_<60>C1_6のマススペクトルを測定した。その結果、C_<60>C1_6は、おそらく脱塩素化が起こりやすいため、すでに報告したC_<60>H1_6よりもかなりフラーレンへの異化性を起こしやすいことが明らかとなった。現在、C_<60>C1_6前駆体からのフラーレンのバルク合成について検討している。さらに高反応性ポリインC_<58>H_4N_2の前駆体を合成しそのレーザーデソープションマススペクトルを測定したところ、微量ではあるが脱水素によるジアザフラーレンC_<58>N_2アニオンを検出することに成功した。また同様にしてC_<36>H_8前駆体を合成しレーザーデソープションマススペクトルを測定したが、この場合には脱水素は起こらずC_<36>を検出するには至らなかった。
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