研究課題/領域番号 |
11450347
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
小川 昭弥 奈良女子大学, 理学部, 教授 (30183031)
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研究分担者 |
平尾 俊一 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90116088)
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キーワード | 光励起サマリウム種 / サマリウム複合還元系 / ポリシラン / 高純度合成法 / 炭素-フッ素結合 / ケイ素-クロル結合 / 還元的縮合法 / レドックス反応系 |
研究概要 |
本研究では、低原子価希土類錯体の光反応挙動の解明とこれに基づく新合成プロセスの開発を目的に、低原子価希土類錯体として有機溶媒に可溶なヨウ化サマリウムを選び、研究を行った。前年度、ケイ素-ハロゲン結合の還元的開裂が低原子価希土類新反応系の創出により可能となったので、本年度はこの反応系をジクロロシランの還元的カップリングに応用した。その結果、ヨウ化サマリウムー金属サマリウムーマグネシウム複合還元系を設計・活用することにより、ジクロロシランのポリシランへの還元的縮合が良好に進行することが明らかとなった。この手法により合成したポリシラン((PhMeSi)_n)はUV-可視スペクトルにおいて340nm付近に極大吸収を有し、このことからケイ素-ケイ素結合が酸素や水で切断されることなく、シグマ共役が純度良く延長していることが明らかとなった。またGPCによる分子量測定の結果から分子量は正規分布しており、平均分子量が約5000であった。現在もっとも一般的なポリシランの合成法である金属ナトリウムによるWurtz型縮合法では、酸素や水の混入によるケイ素-酸素-ケイ素結合の副生や、正規分布を示さない幅広い分子量分布などの問題点が存在する。これに対してヨウ化サマリウムー金属サマリウムーマグネシウム複合還元系では、ヨウ化サマリウムが酸素や水に敏感であるため、脱酸素反応系が達成されており、酸素を含まない高純度のポリシランの合成が可能となった。一方、ヨウ化サマリウム光還元系では、結合エネルギーの大きい炭素-フッ素結合が良好に還元できることが見い出された。以上の成果により、低原子価希土類試薬の光反応特性や複合反応特性が初めて明らかになり、これに基づきポリシランの高純度合成法が開発された。
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