研究概要 |
我々が独自に開発した2種の耐性キラルルイス酸触媒を用いて、チオールおよびヒドロキシルアミン類のエナンチオ選択的共役付加反応を研究し、以下の成果を得た。 (1)チオール類のエナンチオ選択的共役付加反応: 4,6-ジベゾフランジイル-2,2'-ビス(4-フェニルオキサゾリン)のニッケル(II)アクア錯体は、耐性ルイス酸触媒としてチオールの共役付加反応の有効な触媒として働くことを見い出した。この反応は、ジクロロメタンに極性溶媒であるテトラヒドロフランを少量(CH2Cl2/THF=9:1v/v)加えた溶媒中、0℃の比較的高い反応温度下で、チオールを活性化するために触媒量のアミン存在下で行うと、最高97%eeのエナンチオ選択性を達成することができた。この反応は、アクセプター分子をキラルルイス酸触媒で活性化する方法で成功した初めてのチオール類のエナンチオ選択的共役付加反応である。 (2)ヒドロキシルアミン類のエナンチオ選択的共役付加反応: イソプロピリデン-2,2'-ビス[4-(o-ヒドロキシベンジル)オキサゾリン]の銅(II)錯体が、耐性ルイス酸触媒としてO-べンジルヒドロキシルアミンの共役付加反応の有効な触媒として働くことを見い出した。アクセプター基質としては1-クロトノイル-3-イソプロピル-2-イミダゾリジノンが優れていて、希薄溶液中(0.03M)-40℃で反応を行うと、最高97%eeのエナンチオ選択性を達成することができた。基質一般性も観察されたので、この反応はβ-アミノ酸のエナンチオマー合成法として有用である。
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