研究概要 |
環境に応じて秩序化する人工超分子集合体の創製の一環として,ヌクレオチドを認識することができる人工レセプター(受容体)を設計・合成し,その挙動を様々な角度から検討した. 以下に,本年度の具体的な研究成果を箇条書きに記す. 1.前年度に合成し評価を終えたフェロセンをスペーサーとする核酸塩基レセプターの構造を手本として,チミン-チミンジヌクレオチドを認識する人工レセプターを,分子模型や計算機化学的手法をもとに設計した. 2.(1)で得られた結果を基に,人工ジヌクレオチドレセプターの合成を検討し,その合成法を確立した.また,それぞれの反応段階の最適化も行い,全行程の総収率を向上させることにも成功した. 3.人工ジヌクレオチドレセプターのさまざまな物性とそのヌクレオチド認識能を詳しく検討するため,人工レセプターの合成を大量(最終生成物:〜100mg)スケールで行えるよう,ルートを改善した. 4.合成した人工ジヌクレオチドレセプターとチミン-チミンジヌクオレオチドとの超分子集合体形成に関して,種々の分光学的手法を用いて詳細に検討した.その結果,従来にない強い結合能力を有する人工レセプターであることが判明した.さらにその選択性に関しても検討した結果,チミン-チミンジヌクレオチドに対して高い選択性を有するレセプターであることを確認した. 5.以上の成果を基に,他のジヌクレオチドに対する人工ジヌクレオチドレセプターの分子設計と合成を,現在行っている. 以下に次年度の研究計画を記す. 1.人工ヌクレオチドレセプターを長鎖オリゴヌクレオチド中に導入する方法を検討する. 2.その天然・人工ハイブリッド超分子集合体の物性を詳細に検討する. 3.光や特定の分子に応答する超分子集合体の設計と合成を検討する.
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