環境に応じて秩序化する人工超分子集合体の創製を目指し、様々な角度から検討を行った。以下に3年間の研究成果を箇条書きにする。 1.重要な単糖(リボース・デオキシリボース・グルコース)を多点での水素結合で認識する人工受容体を開発した。これらの人工受容体は、認識する単糖の構造に合わせてinduced-fit型で秩序化して会合する。またこの人工受容体を用いて、有機溶媒に不溶な単糖を有機溶媒に抽出することに成功した。現在これらの受容体を用いて、糖質の選択的な化学変換へと研究を展開中である。 2.水中で疎水性相互作用を利用して核酸塩基を認識する大環状ピレノファンの合成に成功した。このピレノファンは、ピレンのエキシマー発光のみを示し、核酸塩基を認識するとそのエキシマーが消滅するという、光刺激に応答する人工受容体であることがわかった。ピレノファンとDNAとの相互作用、ならびにその光化学特性に関して、現在、詳細に検討中である。 3.フェロセンを連結音附に有する人工ヌクレオチド受容体を開発した。この人工受容体においては、ジヌクレオチドの二つの核酸塩基に対して、非常に効率よく二つの核酸塩基認識部位が秩序化しながら相互作用することが判明した。またこの人工受容体を用いて、有機溶媒に不溶なジヌクレオチドを有機溶媒に抽出するごとにも成功した。フェロセンは酸化還元を受けやすい分子であるので、その特性を生かして、電気化学的に活性な人工受容体の開発を現在行っているところである。
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