本研究では、まず将来マトリックスポリマーとなりうる種々の構造のデンドリティック高分子の合成を行った。それらは、芳香族ポリアミドデンドリマーおよびハイパーブランチポリマー、芳香族ポリイミドハイパーブランチポリマー、ポリシロキサンハイパーブランチポリー等である。この中でも合成が容易な芳香族ポリイミドハイパーブランチポリマーの末端にアクリロイル基を導入して、それらの単独重合あるいはアクリル酸エステル共存化の共重合を行い、デンドリテイック高分子を一成分とする複合体の作製に成功した。得られた複合体は、もとのデンドリテイックポリアミドと比べてタフなフィルムを与えることが明かとなった。つぎに、ハイパーブランチポリアミド存在下にギ酸を溶媒と反応試剤として用いるテトラエトキシシランの無水ゾルーゲル反応により、ハイパーブランチポリアミド-シリカ複合体の作製を行った。驚くべきことに、この系では有機ポリマーと無機シリカを見かけ上相溶させることが可能となり、透明なフィルムの作製に成功した。この材料はガラス側から見ればタフなガラスと言うことになり、通常のガラスよりも割れにくくなるはずである。また、ゾルーゲル反応の前段階では均一溶液であるのでガラスの接着剤としての用途も考えられる。ハイパーブランチポリマー側にケイ素を導入する目的で、ポリシロキサン骨格のハイパーブランチポリマーの合成を行った。得られたハイパーブランチポリマーの末端基にアミノ基を導入すると、主鎖が疎水性のポリシロキサンにもかかわらず、塩酸水に可溶となり、しかも疎水性の色素を取り込むなど、1分子ミセルの性質を有することを明かにした。また、末端がフェニルシリル基の場合には光照射によりシリルラジカルが発生し、ハイパーブランチポリマー同士の架橋が起こった。
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