研究概要 |
本研究は,ビニル化合物のカチオン重合において,主として触媒であるルイス酸の設計により,従来不可能とされていた水中でのカチオン重合および立体規制性カチオン重合を実現することを目的とする。 希土類ルイス酸による水中でのカチオン重合 カチオン重合では反応中間体(生長種)が炭素カチオンであるために,これらを失活させる水を溶媒とすることは不可能であると考えられており,事実,四塩化チタンなどの通常のルイス酸を用いると,水あるいはアルコール中でカチオン重合は進行しない。しかし,本研究では,イッテリビウムなどの希土類金属のトリフフオロメタンスルフォン酸塩[Yb(OTf)_3]をルイス酸とすると,プロトン酸を開始剤として水中でメトキシスチレンの重合(分散・懸濁)が可能であり,しかも分子量と末端基の規制されたポリマーが生成することを見出した。さらに,適当な界面活性剤を併用して,精密制御された乳化あるいは分散カチオン重合も開発した。 チタンルイス酸による立体規則性カチオン重合 遷移金属錯体によるオレフィンの配位とは対照的に,一般にカチオン重合では生成高分子の立体構造を精密に制御することは困難である。本研究では,ルイス酸触媒がプロトン酸開始剤とともに生長末端の対アニオンを形成することに着目し,種々の置換基をもつ塩化チタン誘導体などを新たに合成し,ビニルエーテル類のカチオン重合における生長反応の立体制御を検討した。とくに,低温,無極性溶媒中での重合で,2,6-イソプロピルフェノキシ基をもつチタン化合物[TiC1_2(OiPr)_2]を触媒とすると,イソタクチシチーが2連子で90%をこえる立体規則性ポリマーが得られた。
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