研究概要 |
本研究は,ビニル化合物のカチオン重合において,これまで不可能であるといわれていた「水中でのカチオン重合」および「立体規則性カチオン重合」を,主として触媒であるルイス酸の設計に基づいて実現することを目的とする。 ●水中でのカチオン重合 カチオン重合では,反応中間体の炭素カチオンあるいは触媒のルイス酸が水と反応のして失活するため,水中での重合は不可能と考えられてきた。しかし本研究では,昨年度に報告した希土類ルイス酸に続いて,とくに今年度において,銅や亜鉛など種々の遷移金属のトリフルオロメタンスルホン酸塩が水中でも活性を持ち,スチレン誘導体の水中での懸濁あるいは乳化重合を可能とすることを見いだした。また,三フッ化ホウ素がやはり水あるいは水酸基に対して安定であり,過剰に水を含む溶媒中でp-ヒドロキシスチレンの水酸基を保護することなく,直接リビング重合を起こすことを明らかとした。これらはいずれも水中での最初のカチオン重合である。 ●立体規則性カチオン重合 昨年度の本研究で,チタン化合物をルイス酸として設計すると,これらを触媒としてイソブチルビニルエーテルの立体規則性カチオン重合(イソタクト選択性>90%)を実現した。本年度は,さらに同様の触媒を用いて種々のアルキルビニルエーテルあるいは開始剤(プロトン酸)を用いて,立体規則性の制御を検討した。イソプロピルなどの適度にかさ高く側鎖が枝分かれしたモノマーには高いイソタクト選択性が見いだされ,また,開始剤には,かさ高い対アニオンを与える燐酸誘導体が有効であることを明らかとした。
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