研究課題/領域番号 |
11450362
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 耕三 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (00232439)
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研究分担者 |
下村 武史 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助手 (40292768)
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キーワード | 導電性高分子 / 共役系高分子 / 分子被覆導線 / 分子導線 / 超分子 / 包接錯体 / 原子間力顕微鏡 / ナノテクノロジー |
研究概要 |
我々は、最近絶縁性の環状分子であるシクロデキストリンから合成されたチューブ状分子、分子ナノチューブを代表的な可溶性導電性高分子であるポリアニリン(PANI)と溶液中で混合したところ、紐状の導電性高分子がチューブ状分子の空洞内に自発的に潜り込んだ超分子構造体いわば分子被覆導線が形成される現象を見出した。本研究では、このような導電性高分子とチューブ状分子からなる自己組織型分子被覆導線を作成し、分子被覆導線の分子配線としての有用性を実証することを目指している。 フィルム状態の導電性高分子はドーピングを施さない状態では半導体または絶縁体であることが知られているため、本年度はまずドーピングを施した分子被覆導線の作成を試みた。PANIは塩酸などの酸で容易にドーピングが施されることが知られている。また、分子被覆導線には架橋部分に隙間が存在し、小さなドーパントは入り込めると予想されるため、分子被覆導線作成した後に塩酸を用いてドーピングを行った。光吸収測定の結果から、分子被覆導線の溶液に塩酸を加えると、溶液内のPANIはドーピングされていることがわかった。さらに、この溶液をマイカ基板に展開し、AFM観察を行ったところ、ドーピングする前よりもはるかに多数の分子被覆導線が観測された。これは、分子被覆導線がドーピングを受けて正に帯電したのに対し、マイカ基板は負に帯電しやすい性質をもつため、分子被覆導線の基板への付着数が増加したのが原因と考えられる。 現在は、SiO_2上にAuの対向電極(電極間距離500nm程度)を形成し、その間に分子被覆導線を配して、導電率を測定するための準備をすすめている。ドーピングされた分子被覆導線は高い導電率を示すことが予想され、この導電率が測定されれば、分子配線の有力な候補となることが期待される。
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