従来知見のなかった界面上に存在する分子の紫外可視スペクトル測定を非破壊、高感度、セミリアルタイムで測定する方法論を、ハードウエアを含めて確立した。これを界面に存在する色素やタンパク質の電気化学的な酸化還元反応の動的解析に利用した。 まず、導波路からわずかに離した界面の解析が可能であることを、傾斜法とマイクロビーズ法で証明した。また、400nm程度のギャップがあれば、電気化学的に解析ができることも併せて確認した。電極界面とヘムタンパク質との相互作用と、電気化学的な活性の保持について解析した。ガラス透明電極、炭素電極、金電極などにチトクロムCを吸着させた場合、吸着変性すると電気化学的には直接解析ができなかったが、本法では分光学的に吸着量、変性の有無、さらには電気化学的な応答まで解析が可能であった。次に、電位を掃引しながら可視スペクトルを動的に追跡したところ、印加電位の変化に遅れたスペクトル変化が得られた。これは、吸着したチトクロムCは、変性とまでは行かないものの、界面での電子移動反応が遅いことを示している。また、代表的な高分子溶媒であるポリエチレンオキシド(PEO)中での解析にも利用できた。PEOは屈折率が水より大きいため石英導波路は使えないが、高精度で平滑な高屈折率ガラスを導波路として用いることにより、はじめて可能となった。
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