本研究では、トリブロック共重合体A-B-Cの異種ブロックA、Cが、異種ブロック混合による「共ミセル」を形成するか否かの可能性について、その会合挙動を調べ、さらに中央Bブロック鎖のループ・ブリッジ結合の制御を試みることを目的とする。対象とするA、B、C各ブロックとして、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸t-ブチル、ポリスチレンをそれぞれ用いた。またPtBuA鎖にとって良溶媒でPMMA鎖とPS鎖が会合するような選択溶媒として1-ブタノールを使用した。ジブロック共重合体あるいはトリブロック共重合体の希薄および準希薄溶液の光散乱測定、線形粘弾性およびレオロジー特性の測定を行い、これらの溶液中での高分子鎖の会合挙動を調べた。その結果、次の結果を得た。 1)A-B、B-C型のジブロック共重合体では、ミセル形成開始の前駆段階で微量ではあるが巨大会合体の形成(異常ミセル化)が観測された。 2)A-B-A型トリブロック共重合体(PMMA-PtBuA-PMMA)準希薄溶液では、希薄溶液で会合体を形成する温度で、一種類の緩和時間で表されるような典型的な粘弾性挙動を示すゲルを形成する。 3)A-B-C型トリブロック共重合体希薄溶液では、100℃から降温すると、まずPSをコアとする会合体を形成し、次いで50℃付近よりPS、PMMAが共通のコアを持ちPtBuA鎖がループ状となるミセルを形成すると推測された。 4)A-B-C型トリブロック共重合体準希薄溶液は、50℃以下ではゲル化した。このゲルに定常ずり変形を加えると会合の再編成が起こり、PtBuA鎖のループ・ブリッジ結合の割合に変化が生じることが示唆された。また、ゲル調製の温度履歴に依存して会合構造が変化することが示された。
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