研究概要 |
ポリイソブチレン(PIB)のイソ吉草酸イソアミル準濃厚溶液,アタクチックポリスチレン(a-PS)のベンゼン,シクロヘキサンおよびマロン酸ジエチルの各準濃厚溶液について,動的光散乱(DLS)測定から散乱光強度の自己相関関数g^<(2)>(t)を求めた.これらの溶液はいずれも高分子鎖の絡み合いが存在する濃度領城にあり,g^<(2)>(t)には溶媒と溶質の相互拡散によるモードに加えて粘弾性緩和による遅いモードが観測された.a-PSのマロン酸ジエチル溶液では溶媒と溶質の密度がほぼ等しい.この系で後者のモードが出現したことは,拡散と粘弾性緩和のカップリングが濃度ゆらぎに起因する高分子鎖の平衡分布の歪みによるものであるという我々の主張が正しいことを意味する.そこで,上記の各溶液の実験データに対して我々のg^<(2)>(t)に関する理論を適用し,相互拡散係数D,ゴム状平坦弾性率L_0,最長緩和時間τ_m,摩擦係数ζを評価した.その結果,L_0に関してΘ溶媒系ではゴム弾性理論が成立すること,良溶媒系では濃度の低下と共にL_0の値は理論予測より小さくなっていくことが判明した.L_0とτ_mに対する今回の結果は屈曲性高分子のバルク状態および濃厚溶液に対する徒来の力学測定からの結果に一致する.また,Dの濃度変化はΘ溶媒と良溶媒とで大きくことなるが,これは浸透圧縮率の濃度依存性の違いによるもので,ζは溶媒の良否によらず同じ濃度変化を示すことが明らかになった.
|