前年度に引き続き、「セグメント化ポリウレタンウレアの動的赤外分光測定と各種動的寄与の分離定量評価」ならびに「セグメント化ポリウレタンウレアの動的赤外分光学的解析とその分子動力学的解釈」を行った。特に、前年度の成果として記載した、セグメント化ポリウレタンウレアの動的赤外分光測定結果のデータ解析において、動的二色差スペクトルのみならず、動的平均吸光度スペクトルを併用して解析することの重要性に基づき、データ解析を継続した。 ハードセグメントとソフトセグメント中の、各々、ウレアカルボニル基ならびウレタンカルボニル基に起因する吸収バンドを含む波数領域(1800〜1550cm^<-1>)で測定された種々のスペクトルにおいて、セグメント配向を表す二色差の動的スペクトルと静的スペクトルの両者の形状は相似的であるが、水素結合をしたカルボニル基の濃度に関係するウレアならびウレタン吸収バンドの動的および静的平均吸光度スペクトルには大きな相違があり、特に、ハードセグメント中のウレアカルボニル基の動的変化量が大きいことを見出している。さらに、この現象について、球晶構造を有するセグメント化ポリウレタンウレアと球晶構造を有しないものとの比較に重点を置いて検討した。その結果、球晶構造の有無に拘わらず、静的ならびに動的挙動に同様な結果が得られた。すなわち、本実験で用いたミクロ構造を異にするセグメント化ポリウレタンウレアにおいては、球晶高次構造の存在がそのマクロならびにミクロな物性へ影響しないということである。このことは、ハードゼグメントドメインが秩序的に集合して球晶状高次構造を形成しているが、ハードセグメントドメイン間の相互作用に乏しく、外的刺激に対してドメイン単独で運動できることを意味している。これらの結果については、現在、投稿準備中である。
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