研究概要 |
1.新規フラーレン脂質の合成とキャラクタリゼーション アンモニウム基を有するフラーレン脂質10-(N-Methyl-2-fulleropyrrolidyl) decyltrimethylammonium bromide(1)を合成し、その特性を様々な手法で解析した。得られた特性は以下のようである。 ・脂質1は超音波照射により水に可溶化する。電子顕微鏡観察により、1は水中で二分子膜をベースとする超構造体を形成する。・1水溶液中でフラーレンの電子移動反応が可能である。・電極上の1キャストフィルムの電子移動反応が可能である。 2.高次フラーレン・脂質フィルムの電子移動反応 電極上のアンモニウム型人工脂質、テトラオクチルアンモニウムブロミドから形成されたフィルムに固定した高次フラーレン(C84)の電子移動反応を調べた。C84の有機溶媒系での電子移動については幾つか報告例があるが、固定化フィルム系での電子移動は今だ報告されていない。 電極上のC84単独フィルムは水中で電子移動反応を示さなかった。これに対し、C84/テトラオクチルアンモニウムブロミド修飾電極は、+477、+204,-145、-254、-636,-900、-1,110mV(飽和カロメル電極基準)に明確な還元ピークを示した。これらの還元ピークはくり返し電位掃引に対して安定であった。観測されたピークはC84テトラアニオンの生成を示す。還元電位は有機溶媒に可溶化されたC84のそれより大きく正にシフトした。これは脂質フィルムが形成するミクロな疎水環境でのC84アニオンと脂質カチオンとの強い結合を示唆する。
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