今年度は次の2点について調査した。 1)密度成層流に対する変分原理 自由表面を有するポテンシャル流れで有効なLukeの変分原理を多層流に応用することを試みた。彼の汎関数はポテンシャル圧力すなわち速度ポテンシャルの時間微分値、運動エネルギ、重力ポテンシャルの和を領域積分し、さらに任意の時間の間、時間積分したものである。これは随伴変分原理ではないが、汎関数が停留するとき、界面における非定常の圧力条件および運動学条件が自然条件として満足される。多層流でも密度の一定の各層中で、同様の積分により汎関数を作ると、この汎関数は層同士の界面における圧力条件および運動学条件を自然条件とすることがわかった。しかし、時間の積分下限と上限における、速度ポテンシャルと界面位置を基本条件としているため、その時間で厳密解が知られていない限り、この変分原理は有効ではない。そこで時間を0から無限時間とし、油流出のように終端時に静止する場合を想定し、簡単な試験関数を用いて油塊の時間運動を調べたところ、油塊の広がりを速度等を推定するのに有用であることが分かった。 2)非定常滑走艇の変分原理 重力影響を伴う滑走艇の非定常未定浸水面問題の順解法を試みた。流場を遠場と近場に分け、遠場では定常振動的に強さが変動する渦による速度ポテンシャルで波動流場を表現し、近場では遠場と波高の挙動をマッチさせた準定常流場と考え、拘束渦分布と総循環を未知とする連立積分方程式を作った。線形理論に基づく速度ポテンシャルにも関わらず、この解は浸水長の非線形的な変動をうまく表現できることが分かった。
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