本研究は滑走艇等の非自己随伴未定境界面問題に対して、随伴変分原理の作成を試みたものである。この問題の難しさは、境界値問題に対する積分方程式の積分範囲が未定になっていることである。このため、境界面そのものを決定するための積分方程式を必要とし、結局、連立積分方程式を解くことに帰着される。したがって、本研究で目的とする変分原理は、少なくとも2つの積分方程式をオイラー式とすることが必要である。 常微分方程式で表現された非自己隣伴固有値問題の場合でも、積分因子を乗じれば自己随伴化を行うことができる。この事実を元に、上述の問題に対する変分原理を、以下の手法で形式的に作り出すことができることがわかった。 1.水面上の圧力条件を恒等的に満足するように、速度ポテンシャルをグリーン関数表記する。 2.未知変数は物体底面圧力に積分因子を乗じて一階積分した一般化された渦線関数をとる。このとき渦線関数の性質として水面では0または定数となる。 3.物体表面条件も水面の運動学条件も同じ形である。これらを水面に水平方向に1階積分して、物体表面高さ、水面高さの水平方向微分が現れないように、積分因子を求める。 4.汎関数として、水面と物体表面を区別することなく、運動学条件の残差に関する積分表式に積分因子、および随伴渦線関数を乗じた重率残差積分を定義する。 5.渦線関数の性質により、水面部分の積分は陽に1階積分でき、ここで水面高さと物体底面高さの一致条件を課せばよい。
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