研究概要 |
鉄酸化細菌を利用したバイオリーチングは,既存の乾式製錬プロセスと比較して環境への負荷が小さいため,今後21世紀型金属製錬プロセスに発展していくことが期待されており,高いバイオリーチング能力を有する鉄酸化細菌を作製し,バイオリーチング反応装置をコンパクトにすることができれば,浮選精鉱などの高品位鉱の処理にもバイオリーチングの適用範囲が拡大可能となる。そこで本研究においては,鉄酸化細菌の能力を抜本的に改善するための基礎研究として,第一鉄イオン酸化能力が既存の菌株と比べ数倍程度高い鉄酸化細菌を分子生物学的手法で作製・育種するとともに,その遺伝子組換え体の野生株に対する競争力を評価することを目的とした。鉄酸化細菌の遺伝子組み換え体の選択マーカーとして,鉄酸化細菌由来の水銀耐性遺伝子を連結させたベクターDNAを作成した。当研究室保有株の中から,増殖が速く,かつ選択マーカーの水銀イオンに感受性を示す鉄酸化細菌(宿主)を数株選抜し,エレクトロポレーション法によりベクターDNAの導入を試みたが,形質転換効率の高いものは見いだせなかった。また,鉄酸化細菌の遺伝子組み換え体の選択マーカーとして,既存の水銀耐性遺伝子以外のものとして銀耐性遺伝子に着目し,それを保有する鉄酸化細菌の探索を行った。当研究室保有株の中から,高い銀耐性を示す菌株数株を選抜し,Salmonellaで見つかっている銀耐性遺伝子との相同性を検討中である。さらに,当研究室保有の鉄酸化速度の速い鉄酸化細菌の単離株から染色体DNAを抽出・精製し,鉄酸化細菌Fel株由来の鉄酸化酵素遺伝子をプローブとして用いて,それらの菌株の鉄酸化酵素遺伝子をサザンハイブリダイゼーション法により大腸菌プラスミドにクローニングした。
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