研究概要 |
本研究は,油層内における微生物の挙動を微視的にとらえ,その挙動を数学的に解析する手法を確立する事を目的とするものである。その手法として光走査型化学顕微鏡を用いて、模擬油層となる充填層内における微生物挙動の測定およびその評価を行った。 まず、光走査型化学顕微鏡の測定セル内に、粒径100〜1,000μmの珪砂を用いた充填層を作成し、乳酸水溶液を入れ、充填層内におけるプロトンの拡散実験を行い、二次元の有限領域内における物質移動が定量できることを把握した。ついで、同様のセルに運動性のない乳酸菌(Lactobacillus属)の懸濁液と培地を入れ、乳酸菌の生成する乳酸による充填層内のpH変化および物質移動を測定し、充填粒子の小さい方ほどpH変化が大きくなることが認められた。この結果は、粒径45〜900μmという広い範囲にわたる珪砂の場合も同様であった。一方、本研究に使用した乳酸菌は、試験管内に作成した充填粒子45〜1,000μmの珪砂による充填層内において,粒径の小さな方がより増殖量が大きくなることが分かった。この際には、粒径の小さな粒子によって構成される充填層に存在する小さな間隙において微生物がよりよく増殖することが認められた。これは間隙が小さいため微生物のフロックが形成されづらくなることが要因としてあげられる。微生物はフロックを形成すると、フロック内には栄養源およびエネルギー源が十分に供給されないと言われている。また、本実験結果を、乳酸菌の液体培養から求めた増殖収率を用いて整理すると、充填粒子の小さい場合は大きい場合と比較して、3〜5倍の菌体濃度まで増殖していると推定される。以上の結果は、微生物は油層内において、より小さな間隙の場所でよりよく増殖することを示唆しており、その現象が本研究手法によって確認された。さらに、二次元充填層における微生物の増殖および移動を表現する数学モデルを、実験結果をふまえて作成し、充填層内における微生物挙動を解析した。
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