研究概要 |
今までの研究から、SLG9/SRK9に近接した領域に2つの葯特異的遺伝子(SAE1,SP11)を同定していた。SAE1については、Southern解析で、他のS遺伝子系統で多型性が見られるものがなかったことから、今年度はSP11を中心に解析した。昨年度までの研究から、SP11の対立遺伝子となる可能性のあるcloneがS52系統から単離できていた。また、同様の構造をした遺伝子が共同研究を行っている奈良先端大・磯貝教授のグループによって、S8,S12系統から単離されていた。これら4つの遺伝子は、システインに富んだ新規のPCP(Pollen Coat Protein)をコードしていた。特徴として、シグナルペプチド領域が高く保存されていたので、この4つの遺伝子の塩基配列からプライマーを設計し、RT-PCRにより、B.Campestrisの22 Sホモ系統からのSP11遺伝子の増幅を試みた。 まず、4系統の葯cDNAを鋳型とした場合に、SP11のみが増幅されることを確認したので、クローニングし、それぞれの系統に関して3つ以上の独立したクローンの塩基配列を決定したところ、既存のSP11 cDNAの塩基配列とプライマーの塩基配列と3' UTRの長さを除いて、完全に一致が見られたことから、この手法によりSP11の対立遺伝子をクローニングできることを確認した。この手法を他のS遺伝子ホモ系統に応用したところ、実験に用いた18 S遺伝子ホモ系統のうち、花粉側で劣性を示す系統を除いて、いずれの系統でも増幅が確認された。この増幅された系統から、クローニング・シークエンスを行ったところ、いずれの系統でも1種類のクローンの増幅を確認した。さらに、雌しべ側のS遺伝子の侯補であるSLG,SRKとどのように進化しているかという点について、現時点でSP11/SLG/SRKのすべての遺伝子がそろっている5系統について、アミノ酸レベルで、分子系統樹を作製した。その結果、これら3つの遺伝子は共進化していると考えられた。
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