炭素化合物と窒素化合物の移動機構の可視化を目指した研究を計画した。上記の化合物の輸送担体である糖とアンモニウムトランスポーター遺伝子に関する研究はある程度進展させることが出来たけれども、「可視化」には至らなかった。ただし、幾つか可能性のある手法がみつかってきているので、それらの研究を推進し最終的な実現を果たしたい。 2年間の研究成果は以下のように要約できよう。 1.イネ単離胚における糖取込機構を明らかにし、あわせてスクローストランスポーターOsSUT1が維管束篩部特異的に発現すること、その発現が内生の糖によって制御させていることを明らかにした。 種子形成時における糖輸送と糖トランスポーターの関わりについて明らかにした。イネ単糖トランスポーターOsMSTの機能と発現制御に関する詳細を解析した。 2.イネの破生通気腔の形成過程とその制御に、横走維管束の形成と細胞死が関与していることを明らかにした。 3.糖とアブシジン酸の相互作用について検討を行い、糖飢俄がアブシジン酸の内生量を亢進させる現象を明らかにした。 4.イネの根における窒素吸収機構の理解を目的として、アンモニウムトランスポーター遺伝子OsAMTの発現制御・輸送活性について検討した。 5.GFP融合遺伝子を用いて、糖センサー型のイネヘキソースキナーゼOsHXK1がミトコンドリアに局在することを明らかにした。 6.マイクロアレイ技術を用いてイネ胚における糖応答性遺伝子の検索を行った。その結果、糖によって発現が促進されるCa^<2+>結合タンパク質についての検討を行った。 7.イネ培養細胞を用いてα-アミラーゼアイソフォームの糖応答性の詳細を明らかにした。 8.種子デンプン分解酵素β-アミラーゼの生合成ならびにイネ品種間での活性欠損現象に着目し、この欠損がmRNAレベルで起こっていることを明らかにした。
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