研究概要 |
コムギのQ遺伝子は穂の形態(巨頭性 vs.尖頭性)および種子の脱落性に関与する多面発現遺伝子である。RFLPマーカーを用いてQ遺伝子をパンコムギの5A染色体長腕の末端領域にマッピングした。本年度は巨頭性を示すパンコムギ(Triticum aestivum cv. Chinese Spring: CS)と5AL末端領域が欠失しているため尖頭性を示す染色体部分欠失系統q5を材料にしてAFLP-based mRNA fingerprinting(AMF)法を行い、Q遺伝子の候補をえた。CSとq5の頴花分化期にあたる幼穂よりpoly(A)^+RNAを抽出し、二重鎖cDNAを合成した。このcDNAを制御酵素TaqIで処理した後、TaqIアダプターを連結した。アダプターに特異的は配列に1塩基もしくは3塩基付加したプライマーを合成し、都合256通りのプライマー組み合わせにより、AFLPパターンをシークエンスゲルで比較した(AMF法)。全部で約1万2千本のDNA断片を比較して、CSに存在し、q5にみられない乃至は非常に量が少ない27DNA断片をプラスミドにクローニングした(pTaQクローン)。CSとq5系統の幼穂のノーザンハイブリダイゼーション解析により、CSにおいて特異的ないしは過剰に発現している16クローンをえた。16クローンをパンコムギのナリーテトラソーミクス解析で座乗染色体を推定すると6クローンがコムギ染色体第5同祖群に存在した。これら6クローンを詳細にマッピングしてみると、4クローンがq5の染色体欠失領域に座乗していた。遺伝学的地図から、pTaQ22がQ遺伝子と組み換え価0の位置にマッピングされた。さらに、pTaQ10はQ遺伝子から4.1cM離れたPSR370と組み換え価0で連鎖した。他の2クローンは5ALのさらに末端部分、4AL-5AL相互転座領域内にマッピングされた。従って、pTaQ22,pTaQ10が候補としてしぼられた。
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