遺伝子の効率的なクローニング、遺伝子歩行に巨大DNAが挿入されているゲノミックライブラリーの有用性が認識されてきている。パンコムギは6倍性であり、各ゲノムのサイズも大きく(1.6x10^6bp)、巨大DNAを挿入したライブラリーが構築されていなかった。我々は、アグロバクテリウムの系を介してイネ科植物を直接形質転換できるTACベクターを用いてパンコムギのゲノミックライブラリーを構築し、効率よく遺伝子を選抜するシステムを開発した。パンコムギ(Triticum aestivum cv.Chinese Spring)の実生から高分子DNAを抽出した。高分子DNAをHindIIIで部分分解し、TACベクター(pYLTAC17)のHindIII部位にクローニングしたライブラリーを構築した。TACライブラリーは96穴のプレートに各穴、数百コロニーまとめて保存した。これらの各穴の大腸菌からプラスミドDNAを抽出し、12枚分をまとめたワーキングプレートを作製した。選抜する遺伝子に特異的なプライマーを合成し、ワーキングプレート、それのもとになるプレートのDNAに対してPCRで選抜し、最終的にコロニーハイブリダイゼーションで単一コロニーをえた。 TACライブラリーは平均挿入DNA断片がそれぞれ異なる3種類のサブライブラリーからなる。全部でパンコムギのゲノム3コピー分をカバーする計算になる。現在まで9種類の遺伝子に関してスクリーニングを完了した。昨年度、cDNA断片をクローニングしたコムギQ遺伝子候補のゲノミッククローンを選抜している。
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