パンコムギで独自に開発された染色体部分欠失系統を用いて、感度の鋭敏なディファレンシャルデイスプレイ法を応用し、遺伝子発現の差を確実に検出できる実験系を確立した(AMF法)。本研究ではこの直接的遺伝子単離法をコムギの栽培化に最も重要な種子の脱穀性(threshing)を制御するQ遺伝子の単離に適用し、実際にQ遺伝子をクローニングすることを計画した。さらに、花成制御関連遺伝子にもこの手法を適用した。えられたクローンをコムギに形質転換し、機能を確かめることを目標にした。AMF法でQ遺伝子の候補DNA断片をえた。このDNA断片をプローブにしてサザンハイブリダイゼーションを行い、この断片がQ遺伝子と組み換え価0であることを確かめた。また、ノーザンハイブリダイゼーションにより幼穂で特異的に発現していることを確かめた。しかし、マッピング集団で分離してしまい、新たな候補クローンが必要となった。欠失系統を用いてサブトラクション法により新たな候補クローンをえた。 遺伝子の効率的なクローニング、遺伝子歩行に巨大DNAが挿入されているゲノミツクライブラリーの有用性が認識されてきている。パンコムギは6倍性であり、各ゲノムのサイズも大きく(1.6x10^6bp)、巨大DNAを挿入したライブラリーが構築されていなかった。我々は、アグロバクテリウムの系を介してイネ科植物を直接形質転換できるTACベクターを用いてパンコムギのゲノミックライブラリーを構築し、効率よく遺伝子を選抜するシステムを開発した。このシステムにより、効率よくパンコムギの遺伝子がスクリーニングできた。
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