| 研究概要 |
老化過程におけるイネの葉の光合成速度の減少は、主にリブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(Rubisco)含量の減少によって引き起こされる。そこで、葉の老化過程における光合成速度、Rubisco含量の減少機構を根の機能に着目して検討した。
1.1枚の葉、その葉の着生する節およびその節から発根している冠根からなる水稲のモデル植物を用いて実験を行った。その結果、(1)根を一部切除すると、光合成速度、Rubisco含量が急激に減少すること;(2)この光合成速度、Rubisco含量の低下は、NH_4NO_3のみを含む溶液を根に供給しても抑制されなかったが、これとゼアチンや6-ベンジルアミノプリン(BA)を併せて根や葉に供給すると抑制されること;が明らかとなり、根から地上部に送られるサイトカイニンがRubisco含量の維持を通じて光合成速度維持に関与していることが推察された。
2.登熟期の水稲を用いて窒素やサイトカイニンが光合成速度減少に及ぼす影響の機構を検討した。その結果、(1)窒素を追肥すると葉の窒素含量と根から地上部に送られるサイトカイニン量が増加し、葉の光合成速度とRubisco含量の減少が抑制されること;(2)葉身にBAを散布すると葉の光合成速度とRubisco含量の減少が抑制されること;(3)窒素追肥、BA散布によってRubiscoのラージサブユニット遺伝子(rbcL)とスモールサブユニット遺伝子(rbcS)の転写蓄積量が増加し、また、各葉位ともrbcL mRNA,rbcS mRNA転写蓄積量とRubisco含量との間には密接な関係があること;が明らかとなった。以上の結果から、根から地上部に送られるサイトカイニンは窒素とともに老化に伴う葉身のRubisco含量の減少を抑制すること、そしてこのことにはRubisco遺伝子の転写蓄積量が高く維持されることが関係することがわかった。
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