トマトの花芽形成突然変異体lfi(以下ミュータント)は、花序分化後の形態形成に変異がみられ、花芽を全く形成せず、かつ特殊に分化した葉(以下擬葉)が多肉化し果実様になる。そこでこのミュータントと野生型(以下ノーマル)を用いて、花芽あるいは果実形成に特異的な遺伝子を単離するとともに、果樹・果菜における利用の可能性を示すことを目的とした。 花芽形成決定遺伝子としては、アラビドプシスで既に知られているLEAFYおよびAP1が上げられる。そこでトマトにおけるこれら遺伝子のホモログをRT-PCRを用いて単離した。いずれのホモログの発現もミュータントとノーマルの両方で見られたため、両遺伝子の翻訳領域の全塩基配列を決定した。その結果、AP1ホモログについてはミューターンとノーマルで一致したものの、LEAFYホモログでは、ミュータント由来のcDNAのC末端近辺に12塩基対の欠損がみられた。従って、本ミュータントの表現型はこの12塩基対の欠損によると考えられ、トマトのLEAFYホモログが、花芽分化時期と花芽形成に決定的な役割を果たしていることが明らかとなった。一方、果実形成決定遺伝子を単離するため、PCRを用いたサブトラクション法を用い、果実特異的で、かつ果実生長の初期から発現しているmRNAをノーマル果実より単離した。得られた遺伝子は6種類で、ノーザン解析の結果、いずれも根、茎、葉あるいは花での発現はみられないか、非常に低く、一方、果実生長の初期から中期以降で発現が高かった。塩基配列の解析の結果、2種類は細胞壁代謝酵素であり、果実肥大に関与していると考えられたが、他の4遺伝子は未知のものであった。
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