研究概要 |
種子へのガンマー線照射により作出した突然変異系統(T-1,2,3およびT-4)のうち、T-4は花粉非崩壊型雄性不稔で、この系統は秋季の比較的涼温期に稔性回復しやすいことが明らかとなっている。しかし、本系統における着果の様相は一様でなく雄ずい、雌ずいの環境依存の遺伝的不安定さが示唆された。そこで、雌ずいと雄ずいの反応を分けるためT-3系統を雌株として用いT-4系統の花粉稔性回復について解析した。また、この雄性不稔発現の遺伝様式を明らかにした。 (1)雄性不稔の花粉受精能の検定を行い,T-3 x T-4花粉は9月後半〜10月後半、1月後半〜4月後半に、わずかに稔性が回復し有種子果をつけること、この傾向はT-4 selfでも同様の傾向であった。なお、T-4では、10月後半〜3月前半の低温期に強く単為結果が誘起された。 (2)暗期の低温(8℃)は高温(24℃)より強く稔性を回復させ、花粉形成中の温度が花粉の受精能に強く影響する一方、低温で誘発される単為結果はT-4個体の雌ずい側の反応によるものであった。 (3)雄性不稔ヘテロ自殖で分離した不稔株に'First'を年次を変えて交配し、ヘテロ自殖後の分離比を求めたところ可稔:不稔の分離比が13:3によく適合したことから、可稔抑制遺伝子「I」を仮定した。可稔遺伝子を「F」としたとき、可稔遺伝子が「ff」劣性ホモになると、優性遺伝子「I」により雄性不稔が発現すると考えた。ヘテロ自殖が13:3に分離するためには、ヘテロ遺伝子型はFfIiでなければならない。 (4)トマトの雄性不稔系統'T-4'の不稔遺伝子に連鎖するDNAマーカーの開発を試みた結果,2種(CMN-B30,-B50)のRAPDマーカーが開発され、そのうち一つ(CMN-B50)についてはSTSマーカー化に成功した。これらのマーカーは、F1種子生産に用いる雌親育種のための有効な選抜マーカーとして利用できる。また、AFLP分析を行った結果、'First'とT-4との間で計6本の多型バンドを検出することができた。 (3)の試験結果から、T-4雄性不稔の遺伝子型としてはffIIとffIIiの2種類が考えられる。これを証明するためには、自殖によって前者はすべてが不稔に後者は可稔1:不稔3になることを検証する必要がある。
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