トマトとバナナ果実を用いてエチレン生合成関連遺伝子の発現に対する内的フィードバック制御機構を解析した。トマトについては、ポジティブフィードバック制御を受けているACC合成酵素LE-ACS2とネガティブ制御を受けているLE-ACS6のプロモーター領域を、それぞれ2.4kbおよび2.2kbクローニングし、GUSコンストラクトを作成してプロモーター活性を測定した。いずれのコンストラクトも果実の発育および成熟に伴うmRNAの発現レベルの変化とよく対応したプロモータ活性を示したので、デリーション分析を行ったところ、LE-ACS2では-1493bpから-695bpの間に、LE-ACS6では-1333bpから-636bpの間にエチレン応答領域が存在することが明らかとなった。バナナでは、MA-ACS1はエチレン処理による成熟開始とともに強く発現誘導されたが、直ちにそのレベルが著しく弱まることから、この遺伝子のフィードバック制御機構は極めて複雑であることが示唆された。この原因を探るため、3種のエチレン受容体遺伝子ETRをクローニングし、エチレン作用阻害剤であるMCP処理を行って発現解析を行ったが、現在のところMA-ACS1の発現制御の複雑さを説明できるまでには至っていない。しかし、従来は測定不可能であったバナナのACC合成酵素の抽出方法を確立し、成熟に伴う活性変化がエチレン生成量と対応していることが確認できた。今後、トマトの2つのACS遺伝子のエチレン応答シスエレメントの部位決定と、バナナのMA-ACS1の発現特性を詳細に検討する予定である。
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