研究概要 |
これまで,筆者らはVA菌根菌を活用した栽培体系を検討するとともに,この菌の生長促進物質の探索や人工培養について調査を行ってきた。本研究では,残りの生長促進物質の同定を行うとともに,筆者らが世界に先駆けて開発した培養技術をさらに改良して,この菌のホルモンを探索する。また遺伝子分析技術などを用いて,共生メカニズムの解析も試みる。本年度で得られた結果は,下記に示すとおりである。 1)これまでの人工培養法をさらに改善した(Rutto ら,1999)。この培地では,胞子を切除した菌糸でも著しく増殖した。しかし,水だけの培地では菌糸の伸長が全く見られなかった。なお,新しく開発した培地では,様々の栄養物質に加え,キビ根に含まれるVA菌根菌生長促進物質や,リン脂質を添加している。 2)バヒアグラス根およびキビ根の25%メタノール溶出液中に含まれる未同定の生長促進物質の構造決定を行った。これらの物質(現時点では公表できない)は,これまでに報告されているものと異なっていた。 3)植物体(有機物)中に含まれるVA菌根菌生長抑制物質は腐熟処理によって容易に分解されるが,生長促進物質の多くは残存することを発見した(石井ら,2000)。 4)植物とVA菌根菌のつながり,つまり菌糸によるネットワークの形成を生理・生態学的に詳しく調査した(Cruz et al.,2000,クルスら,2000)。特に,バヒアグラス根およびキビ根の25%メタノール溶出液がVA菌根菌菌糸を引きつける効果があることを明らかにしたことは興味深い。 5)VA菌根菌-植物間における共生メカニズムに関与している二,三のタンパク質を発見した(石井ら,1999)。
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