加賀太キュウリの苦味物質の本体であるククルビタシンCは、その生合成の中間過程、HMG-CoAからメバロン酸に転換する過程、に作用し、この過程のキー酵素はHMG-CoA reductaseである。また、細胞分裂およびタンパク質合成が活発な果実の初期の発育時期では、HM-CoA reductaseの活性が高まる。先の報告書で、苦味果の発生が高い植物体では、窒素代誘が活発でアミノ酸含量が高いことを明らかにした。これらの結果を考え合わせると、苦味果の発生の高い植物体ではタンパク質合成が活発となる緒果、HMG-CoA reductaseの活性が高まり、ククルビタシンCが多量に生成される結果、苦味が発現するものと推察した。以下、これらの調査を行った。 第1番目に、苦味果が多発する、低温下でのあるいは窒素肥料を多く施与した条件下で栽培した株あるいは苦味果が多発する系統の株の葉あるいは苦味のある果実では、タンパク質の含量が大きくなった。 第2番目に、苦味果が多発する株、あるいは苦味のある果実ではHMG-CoA reductaseの活性が高くなった。 これらの結果から、窒素代謝が活発化する苦味果が多発する条件下では、タンパク質の含量が大きくなり、HMG-CoA reductaseの活性が高くなる結果、ククルビタシンCが多量に生成され、苦味果が多発するものと考えられる。従って、苦味のない高品質の加賀太キュウリを生産するためには、窒素代謝をやや抑制し、タンパク質の含量が大きくならないようにすれば、HMG-CoA reductaseの活性が高くならず、その結果ククルビタシンCの生成が阻害され、苦味果が発生しなくなるものと考えられる、実際栽培では、1)定植時期を遅らせ低温に遭遇さないようにする、2)促成栽培ではビニルハウスを暖房する、3)窒素量を適宜適量施用する、ことが必要と考えられる。
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