殺虫剤感受性(SA)および抵抗性(N3D)系統ツマグロヨコバイ頭部から、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)を抽出し、各種クロマトグラフィー、ゲルカット法などにより2000倍から3000倍に精製した酵素標品を得た。これらを用い、生化学的な諸性質を調べたところ、粗酵素標品と同様に、抵抗性系統では殺虫剤に対する感受性低下が認められ、基質に対する特異性も感受性ではベル型であったが、抵抗性では高濃度での阻害は見られなかった。また、電気泳動法によっても、両系統で違いは認められなかった。さらに、degenerate-primerを用いてAChE遺伝子と思われる約300bpの断片を得、その塩基配列を基に、5'raceおよび3'race法を用いて残りの塩基配列を決定した。SAおよびN3D系統のAChEとも677のアミノ酸残基からなっており、分子量は75600であった。両系統間のcatalytic gorge内およびopen reading frame内で、殺虫剤抵抗性機構としてショウジョウバエ、コロラドハムシで確認されたようなAChEのアミノ酸の置換は認められなかった。従って、ツマグロヨコバイのAChEの低感受性機構はマダニで報告されているような、翻訳後修飾の可能性が考えられた。今後は、どのような翻訳後修飾が関与しているか明らかにし、ツマグロヨコバイにおける逆相関交差抵抗性の分子機構の全容を解明したい。
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