研究概要 |
クロロフルアズロンを低薬量(LD30)で幼虫期に処理した場合,それが成虫になった時に精巣の発育が不完全になり次世代の個体数が減少することがわかっているが,今年度は現象面を確実にとらえるために,薬物処理によって精巣および付属腺にどのような変化が起こっているかを観察することに主眼をおいた。精巣および輸精管全部をパラフィン切片を作成し比較観察をおこなった。その結果精巣自身の体積増加が未処理個体に比べて抑制されていることがわかった。組織的な変化は明らかにならなかった。さらに精巣付属腺を構成する細胞の発達状況を観察したがほとんど違いがみられないこともわかってきた。これらのことからクロロフルアズロンにより精巣の発達が抑制されていることがわかったので,寄生蜂による精巣発育抑制と同じようにecdysone receptorの変化に着目し,現在receptorのクローニングを行っている。 内部寄生蜂カリヤコマユバチが雄寄主に寄生した場合,寄生蜂幼虫が寄主体内で利用できる資源量をへらさないために寄主精巣の発育を阻止する仕組みの一環としてRNaseT2が働いていることが既にわかってきている。RNaseT2の活性部位を含むポリドナウイルスの部分配列を切り出し発現ベクターでタンパクに翻訳させ抗体を作成,細胞が壊れているところでその抗体反応により検出を行った結果タンパクが形成されていることが明らかになった。そこでさらに確実にするために精巣内でのRNaseT2遺伝子発現を抑えることで,精巣の崩壊が止まるかを現在追求中である。
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