研究課題
(1)凍結開始部位の特定:ニカメイガ越冬幼虫では筋肉あるいは表皮からの凍結がみられたが、オオタバコガでは特定できなかった。これは、オオタバコガ蛹体内に特異的な氷核の生成がみられないことを示している。(2)凍結による初期障害部位の特定:ニカメイガ休眠幼虫では絹糸腺が、非休眠幼虫では脂肪体が先ず壊死した。オオタバコガの休眠蛹では全体に壊死がみられた。(3)培養細胞による冷温と凍結障害の解析:血清無添加培地で培養されたヨトウガ培養細胞の細胞膜のCaチャネルは、0℃処理4日後より障害を受けた。昨年報告した結果と合わせ、冷温による細胞障害として、Naチャネルが次いでKとCaチャネルが障害を受けた。生体染色法による細胞死の結果とこれらイオン透過性の障害時期と一致していた。(4)耐寒性に関与する遺伝子の特定:カイコガの休眠遺伝子として知られているBmETSの塩基配列をもとに、ニカメイガ幼虫より抽出したmRNAを鋳型とするRNA PCRを行った。クローニングの結果、約900bpのDNA断片が休眠時に最も高い発現を示した。本遺伝子と有意な相同性を示す配列は検出されなかったが、これが耐寒性あるいは氷核蛋白質の合成に関係するかどうかについては、全塩基配列を特定することにより今後明らかにする。(5)ニカメイガ幼虫の消化管より単離された氷核糸状菌Fusarium moniliforme var. subglutinansが生成する氷核蛋白質を精製した。この蛋白質のアミノ酸シークエンサで分析したところ、最終精製量が少なくアミノ酸の一次構造の解析はできなかった。増量し再度解析を行う予定である。
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