研究課題/領域番号 |
11460028
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
波多野 隆介 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (40156344)
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研究分担者 |
柴田 英昭 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教授 (70281798)
佐藤 冬樹 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (20187230)
秦 寛 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教授 (30250492)
倉持 寛太 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (00225252)
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キーワード | 窒素循環 / 流域 / 森林 / 草地 / 農地 / 硝酸溶脱 / 家畜糞尿 / アンモニア揮散 |
研究概要 |
地域における食糧の生産と消費に伴う窒素フローを記述するシミュレーションモデルにより、北海道における化学肥料施与量、人口、家畜飼養密度、土地利用変化の河川水質への影響に関する感度分析を行った結果、河川水窒素濃度は化学肥料施与量の増加に最も敏感であり、ついで家畜飼養密度、人口の増加に影響を受けることが明らかとなった。このことに基づき、現地調査を行った結果、畑作および草地酪農あるいは畜産を中心とする北海道の6市町では畑および草地面積割合の増加に伴って、河川水窒素濃度は上昇し、その関係は有意に回帰されたが、明らかにその傾きは市町により異なっていた。すなわち土地利用と施肥管理の両者が河川水に影響を与えていた。この傾きは、それらのインパクト係数と呼ぶことができよう。インパクト係数は、調査市町における家畜由来の廃棄窒素、農地の余剰窒素により回帰され、食糧の生産と消費が河川へ直接影響を与えることが定量的に示された。また、一部、家畜糞尿処理水の直接流入により、農地面積と河川水濃度の関係から大きくはずれた高濃度の河川水濃度が認められた。水田、畑と草地、市街地、森林を含む2地域では、畑と草地および市街地の増加が河川水窒素濃度の上昇に大きく寄与し、水田の寄与は小さく、森林の増加により河川水濃度は低下した。農地、市街地を通過した後の河川水窒素濃度は、北海道208市町村の平均値で0.65mg L^<-1>であった。これはモデルによる計算結果より約40%低く、河川への流出過程で浄化機能が働いている可能性がある。この流出機構の詳細を1つの流域全体が利用されている牧場において精密に測定し、牧場の管理台帳を用いて、土地利用に伴う窒素循環量を推定し、その収支を求めた結果と比較した。その結果、降雨時の流出傾向を見ると降雨毎に流量と窒素流出量の関係は異なり、一回の出水時でも流出ピークの前後でその関係は異なり、これらをすべて別々に回帰した式を用いて、年間河川窒素流出量を見積もった結果、全窒素流出量20tのうち、融雪期に46%、降雨時に41%の合計87%が流出していた。なお、降雨時の窒素流出は降雨前10日に農地に施与された窒素により生じていた。また、牧場の窒素循環から見積もった収支は、農地余剰窒素として12.1tであり、河川への流出は、農地余剰窒素のみならず、侵食による土壌窒素も含まれていることが示唆された。農地からの流出は、降雨時および融雪期に暗渠から明渠を通してほとんど全量が流出してしまうと思われた。
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