Rubiscoの小サブユニット遺伝子rbcSをアンチセンス方向に導入し、Rubisco量を減少させた形質転換体イネを中心材料とした。本課題では、Rubisco量を非形質転換体イネに対して65%に減じたものと40%に減じた植物を用い、異なるCO_2環境下(36Paと100Pa)における個葉レベルでの光合成と個体レベルでの成育および乾物生産について調べた。 36PaCO_2環境下ではアンチセンスイネの乾物生産量は著しく低く、その成長は個葉レベルでの光合成およびRubisco量と高い相関があった。しかしながらその一方で、葉面積比の増加、葉への窒素投資量の増加、光合成産物の成長への利用効率の向上、および葉の老化の遅れなどの個葉レベルでの光合成低下に対する補償作用が個体レベルで観察された。 100PaCO_2環境下においては、非形質転換体イネとアンチセンスイネの乾物生産にはほとんど差がなかった。Rubisco量65%のイネは理論的には高CO_2環境に最適化したものであり、実際個葉レベル光合成速度では非形質転換体に比べ若干高い値が測定されたが、乾物生産量は非形質転換体を越えることはなかった。これは初期成育のRubiscoアンチセンス効果が大きいことによっているものと推定された。しかし、成育後半では純同化率は非形質転換体イネを若干上回り、純同化率を全葉身の窒素含量で割って算出した乾物生産の窒素利用効率は形質転換体イネの方が高いなど個葉光合成と合致した結果も認められた。
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