研究概要 |
我々は、タンパク質生合成において、中心的な役割を果たすペプチド鎖伸長因子EF-1が4種類のサブユニット(αββ'γ)から構成され、EF-1αはaa-tRNAのリボソームへの結合反応を触媒し、EF-1ββ'γ(EF-1βおよびEF-1β')は、GDP/GTP交換反応促進因子であること等を明らかにしてきた。EF-1γは機能が不明であったが、本研究において、大腸菌で発現したEF-1γが、glutathione S-transferase活性を保有することを明らかにし,酵素化学的諸性質を明らかにした。さらに、EF-1各サブユニットとGFPとの融合遺伝子をタバコBY-2細胞に導入し、細胞内局在性を追求した結果、テストした3サブユニット(EF-1α、EF-1βおよびEF-1γ)は、間期の細胞では細胞質のアクチンフィラメント上に局在し、分裂期の細胞では、EF-1αおよびEF-1γは、染色体の分離に関与する紡錘体上に局在することを明らかにした。間期の細胞におけるEF-1α、EF-1γおよびアクチンの繊維状構造は、低温ストレス(0℃30分)により消失し、エネルギー源の存在下での保温(25℃、1〜10分)で回復した。また、カイコEF-1βをもちい、GDP/GTP交換反応に関与する部位を明らかにした。これらの成果は、細胞骨格形成、細胞増殖、ガン化、アポトーシス等へのEF-1各サブユニットの関与を解明する突破口になるものと期待され、本研究の目的を十分達成したと考えられる。
|