研究概要 |
サーモライシン(T)のチロシン(Y)、カルボキシル基(D+E)、リジン(K)を化学修飾し、活性と好塩性に対する効果を評価した。YとKの修飾では活性は低下したが、(D+E)修飾では変化がなかった。T分子表面の電荷の減少につれて、好塩性が低下した。Kをポリエチレングリコール(PEG)で修飾し、PEG-Tを調製した。Tの活性はPEG化につれ増大し、6個のKが修飾されると6倍増大した。Tの熱安定性(Tm)はPEG化により87℃から91℃に上昇した。PEG化の効果は高濃度塩類添加効果に対応しており、塩の効果をPEG化で再現できる可能性がある。活性部位残基を標的に変異導入を検討した。T産生菌の変異体から変異酵素(T1,T2)を得た。T1ではTのVal-140がAlaに、T2ではAla-73がValに変換されていた。T1はTに比べ、蛋白質分解活性が150%に増大したが、低分子ペプチドFAGLA分解活性は35%に減少した。逆に、T2では蛋白質活性は10%に減少し、FAGLA活性は1200%に増大した。Val-140,Ala-73の部位特異的変異導入から、Ala-73とVal-140は、Tの基質特異性決定に大きい影響をもつことが示され、Ala-73へのかさ高い側鎖の導入により、蛋白質分解活性を抑制し、高いペプチド特異性を持つ酵素を創出できた。A73Vは人工甘味剤前駆体合成活性もTに比べて10倍高く、ペプチド合成における有用性が示された。Tの活性部位ZnをCoに置換した。Co-TではTに比べペプチド分解活性が4-5倍増大した。遷移状態アナログによる阻害活性も5倍増大したことから、Co-EではTに比べて遷移状態が安定化されることにより、活性が増大すると考えられた。Co-Tは4M NaClにより15倍活性化された。塩による活性化は、Co-置換による活性化と相乗的であり、通常の条件下におけるTに比べ、4M NaCl存在下のCo-T活性は70倍も高い。ヒトMMP-7(M)の好塩性、安定性、阻害剤の効果を検討し、Tと比較した。MはTの活性ドメインと構造的に類似している。M活性はT活性同様、塩濃度に依存して増大した。Tでは活性化がkcatのみに依存したが、MではKmのみに依存した。Tmは85℃。MとT活性ドメインとの高い類似性が示された。
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