研究概要 |
内分泌攪乱化学物質(Endocrine disruptor : ED)による環境や農水畜産物の汚染の拡大とそれに伴う人の健康並びに生態系への影響が心配されている。これらEDは極低濃度(ナノレベル)で動物の内分泌系に作用する。そこで、ナノレベルのEDsを検出・負荷軽減する新たな技術が求められている。植物は発達した根系を介して、広範囲から極低濃度の化学物質を吸収・集積する。また、作物は環境下での管理が容易で、環境安全性が高い。そこで本研究では、植物の薬物代謝型P450遺伝子を探索し、それらのED代謝性能を評価することを試みた。 1.タバコの薬物代謝・誘導型P450遺伝子CYP71A11 タバコのCYP71A11遺伝子は2,4-Dなど多くの化学物質の処理で誘導発現する。生成したCYP71A11は除草剤クロロトルロンのN-脱メチル化を触媒し、除草剤代謝・選択性に関与している。多くの化学物質の内、除草剤ブロモキシニルによる遺伝子誘導発現に係わるプロモーター領域を特定することを試み、ブロモキシニル応答因子を明らかにした。 2.イネ薬物代謝型P450の除草剤代謝 イネから取得したCYP72A18とCYP72A21のcDNAをおのおの酵母に発現し、相当するP450発現酵母ミクロソーム画分を用いて各種除草剤代謝分析を行った。その結果、CYP72A18は除草剤ペラルゴン酸を代謝することが判明した。代謝産物はω-1水酸化ペラルゴン酸であることを同定した。 3.除草剤多剤耐性雑草ロリウム品種のP450遺伝子 ロリウムの除草剤多剤耐性品種WLR2は除草剤クロロトルロンなどの代謝活性が高く、しかも、特異的にCYP71R4を発現している。そこで、本cDNAをクローニングし、酵母に発現し、酵母ミクロソームを用いて除草剤の代謝を測定した。その結果、CYP71R4は除草剤クロロトルロンを代謝した。ロリウムの多剤耐性には除草剤代謝に係わる本P450遺伝子の発現が係わっていることが判明した。
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