ソラナピロン生合成遺伝子を明らかにすべく、ジャガイモ夏疫病菌のゲノムライブラリーを作成した。既知ポリケタイド遺伝子の保存性の高い領域をもとにプローブを作成し、相当する遺伝子をスクリーニングしたところ、PKS遺伝子を含むと推定されるコスミド2個を得た。現在、PKSコード領域全体を明らかにすることを目標に配列解析を進めている。 アルタナル酸およびソラナピロンの病原菌由来宿主特異的また非特異的毒素のジャガイモ細胞膜タンパク質キナーゼに対する影響を検討した。また、疫病菌のサプレッサーおよびエリシターの本酵素系に対する作用についても検討を行った。さらに、ジャガイモCa^<2+>依存型タンパク質キナーゼの遺伝子をクローニングし、大腸菌より融合タンパク質キナーゼを純化精製し、これら病原菌因子の本タンパク質キナーゼに対する作用を解析した。その結果、アルタナル酸(AA)、25μMでは、ジャガイモ細胞膜(ダンシャク)のタンパク質キナーゼを一過的に刺激し、その活性を上昇させた。ソラナビロンは、逆に25μMの処理では、細胞膜でのキナーゼ活性を30%阻害した。これらの結果から、宿主特異的毒素(AA)は、宿主細胞膜のタンパク質キナーゼを刺激し、その情報を伝達することが判明した。さらに、ソラナビロンは、タンパク質キナーゼを阻害し、負の制御効果に寄りその毒素作用を発揮することが明らかとなった。抵抗性のジャガイモ品種細胞膜においてもこのような反応結果が見られた。サプレッサーの処理により、ジャガイモ細胞膜のタンパク質キナーゼ活性は20%低下し、処理60分後までこのような効果が持続した。エリシター処理により、タンパク質キナーゼ活性は15-25%上昇した。これらの結果により、病原菌の病原性因子は、ジャガイモ細胞膜のCa^<2+>依存型タンパク質キナーゼに働きかけ、その情報の認識が行われていることを初めて明らかにした。
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