ジャガイモ夏疫病菌のゲノムライブラリーを用いたソラナピロン生合成遺伝子クラスターの探索において一つの還元型ポリケタイド合成酵素(PKS)遺伝子が見出された。このPKS遺伝子をAsperguillus oryzaeに形質転換導入し、得られた形質転換体の培養を行ったところ、ソラナピロンと構造が酷似した化合物の生産を確認した。現在このアルタナピロンと命名した新規化合物がソラナピロンPKSの異常生成物なのかあるいは別のPKS由来のものか解析中である。いずれにせよこれにより当初の目的である植物毒素生合成に関わるPKSを絞り込む方法論が確立された。 ジャガイモCa^<2+>依存型タンパク質キナーゼRiCDPK1の遺伝子をクローニングし、大腸菌で高発現させ、融合タンパク質としてキナーゼを純化精製した。ジャガイモの細胞膜受容体キナーゼに対する病原菌Alternaria solaniの生産する植物毒素アルタナル酸およびソラナピロンの生理作用を解析し、ジャガイモ及びトマトの過敏感細胞死に対する、これら毒素の影響を解析した。我々は、品種リシリのRiCDPK2遺伝子をもちいて、その融合タンパク質CDPK2を純化し、A. solaniの生産するアルタナル酸25uMの影響を解析した。今回の結果から、Ri CDPKキナーゼは、アルタナル酸25uMにより活性が阻害され、また、ソラナピロンAにより阻害された。それらの阻害活性のための条件として、Ca2_+とMg2_+イオンの存在が不可欠であり、RiCDPK2の活性制御の重要な因子であることが判明した。以上の結果から、我々は、宿主特異的毒素アルタナル酸が、RiCDPKキナーゼを制御する病原性因子であり、活性を阻害する結果、抵抗性の過敏感反応が抑制されることを明らかにした。
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