研究概要 |
1.ジベレリン高生産状態のイネ馬鹿苗病菌から調製したcDNAを鋳型としてRT-PCRを行い、ent-カウレン合成酵素をコードする遺伝子をクローニングした。この遺伝子には952個のアミノ酸がコードされており、推定分子量は107kDaであった。このcDNAを大腸菌内で発現させた組換えタンパク質は、ゲラニルゲラニル二リン酸をコパリル二リン酸、さらにent-カウレンへと変換し、このcDNAは二つの機能を持ったジテルペン環化酵素をコードしていることが示された。これは糸状菌からクローニングされたジテルペン環化酵素遺伝子としては2例目で、最初にクローニングされた別のジベレリン生産菌Phaeosphaeria sp.L487株のent-カウレン合成酵素のアミノ酸配列と高い相同性を示した。 2.Phomopsis(Fusicoccum) amygdaliが生産する、H^+-ATPアーゼ活性化ジテルペン配糖体フシコクシンの初期生合成経路の解明を行った。フシコクシンのアグリコンの生合成炭化水素中間体候補化合物として、既に報告者等が単離・構造決定した(+)-フシコッカ-2,10(14)-ジエンと、これまで仮想中間体として考えられていた、この[1,10(14)]異性体の重水素標識化合物を合成し、それらの本菌による取り込み実験から、初めて前者が真の生合成中間体であることを明らかにした。さらに、本菌から、その8β-オールを極微量同定すると共に、その合成重水素標識化合物のフシコクシン類への高い取り込み結果から、最初に生成する水酸化フシコッカン中間体の構造をも明らかにすることができた。現在、本菌のセルフリー系の調製を試み、GGDPからフシコッカ-2,10(14)-ジエンへの変換を試みている。
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