研究概要 |
菌類が生産する重要な環状ジテルペンであるジベレリン(植物ホルモン)、アフィジコリン(DNAポリメラーゼα特異的阻害剤)、さらにフシコクシン(植物H^+-ATPアーゼ活性化物質)について、各生産菌における生合成環状中間体炭化水素等の同定と特定を行い、その環化酵素遺伝子のクローニングと機能解析に関する研究を行った。イネ馬鹿苗病菌からジベレリン生合成中間体炭化水素であるent-カウレンの合成酵素遺伝子をRT-PCRによりクローニングした。それを大腸菌内で発現させた組換えタンパク質はGGDPをent-カウレンへ変換した。アフィジコリンを生産するテンサイ蛇眼病菌の培養菌体に含まれる環状炭化水素類を精査し、アフィジコリンの生合成中間体のアフィジコラン-16β-オール等とともに、ステマラ-13-エン等を同定した。さらにRT-PCRによりアフィジコラン-16β-オール合成酵素遺伝子をクローニングした。それを大腸菌内で発現させた組換えタンパク質はGGDPをアフィジコラン-16β-オールへ変換した。フシコクシンJとその新関連物質を生産することを見出したアーモンド萎凋病菌F6株の培養菌体に含まれる環状炭化水素類を精査し、フシコクシン生合成中間体候補化合物の新規(+)-フシコッカ-2,10(14)-ジエンを単離し、その立体構造を化学合成により決定した。また、これがGGDPから本菌のセルフリー系で生成することも確認した。さらに、その合成重水素標識体がフシコッカ-2,10(14)-ジエン-8β-オールに代謝変換されることを明らかにし、本菌から天然物としてのフシコッカ-2,10(14)-ジエン-8β-オールを分離・同定するとともに、その合成重水素標識体がフシコクシンJに代謝変換されることを証明した。現在、フシコッカ-2,10(14)-ジエン合成酵素遺伝子のクローニングを試みている。
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