研究概要 |
【目的】癌細胞の有する生物学的特性として,無限増殖性と転移性があげられる.複雑な癌の転移過程で,癌細胞の浸潤は重要かつ特徴的な段階である.また,担癌宿主には衰弱の原因となる癌性悪液質としての高脂血症が発生する.そこで本研究では,癌とそれに付随する症状(癌細胞の増殖・浸潤・転移と癌性高脂血症)に対する果実成分とくにブドウ中のレスベラトロール(RESV)の作用とその機構解析を目的とする. 【方法】モデル癌細胞としてラット由来腹水肝癌AH109A細胞を用いた.肝癌細胞の増殖能はWST-1法または[^3H]チミジン法にて測定した.肝癌細胞の浸潤能はラット腸間膜より初代培養した中皮細胞と肝癌細胞とを共培養し中皮細胞層下にもぐり込んだAH109A細胞の数およびコロニー数を位相差顕微鏡下で数えることにより測定した. 【結果】前年度の結果を基に,RESVを直接細胞に作用させて蛍光染色法によりアポトーシスの誘導性を検討したところ,増殖抑制を示す200μMでも誘導されなかった.次にRESVの投与量を増加させた場合の経口投与後ラット血清がAH109A細胞の増殖と浸潤におよぼす影響を検討した.その結果,投与量を上げても増殖は抑制されず浸潤のみが抑制されること,経口投与後血清は活性酸素による浸潤亢進現象を消失させることから,RESVの抗酸化機能が浸潤抑制に関与することが明らかとなった.RESVは,肝癌移植ラットの脂質代謝異常を軽減化する方向に作用することが明らかとなった. 【予定】アラキドン酸カスケードに対するRESVの作用と浸潤とのかかわり,内因性活性酸素種とRESVの浸潤抑制作用,動物個体レベルでのRESVの作用を検討していく予定である.
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