研究概要 |
がん細胞は無限増殖性と転移性という生物学特性を有する。複雑ながん転移過程の中で、浸潤過程は重要かつ特徴的ステップである。モデルがん細胞としてラット由来腹水肝癌AH109Aを選び、細胞培養系で増殖能と浸潤能検定系を構築し、ブドウ果皮に多いレスベラトロール(Rv)の作用を検討した。担癌宿主には、しばしばがん性悪液質としての高脂血症が発生するので、これに対するRvの作用も検討した。 増殖能と浸潤能検定系にRvを直接添加すると、増殖能は50μMまでは影響を受けなかったが、それ以上の濃度(〜200μM)では用量依存的に抑制された。一方、浸潤能は25μMから用量依存的に抑制された。Rvを経口投与後、経時的に血清を調製し、これを検定系の牛血清のかわりに添加すると、増殖抑制能が消失したが、浸潤は有意に抑制され、投与1時間後の血清が最大の抑制効果を示した。そこで、Rvの投与量をかえて1時間後に得られた血清につき用量-作用反応を検討したところ、浸潤は用量依存的に抑制された。次に、Rvの浸潤抑制機構を検討した。肝癌細胞を活性酸素発生系にさらすと、浸潤能が亢進することを見いだした。細胞を活性酸素に曝すとき、RvそのものあるいはRv投与後血清が共存するとこの亢進は起こらず、Rvの活性酸素捕捉能が浸潤抑制に関与していることが示唆された。このことは、細胞内活性酸素量をFACSにて解析した結果からも支持された。Rvはcyclooxygenaseを阻害することによりプロスタグランジン(PG)産生を抑制する。Rvで浸潤を抑制しているところにPGE_2を添加するとこの抑制が解除されたので、PG産生抑制を介するRvの浸潤抑制機構も考えられた。 担肝癌ラットの血清脂質におよぼすRv投与の影響を検討した。飼料中の添加量が低容量(10,50ppm)のときには血清脂質(コレステロール、トリグリセリド、過酸化脂質)濃度が低下するが、高用量(100ppm)ではむしろ効果がなくなった。
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