研究概要 |
1、肝L型ピルビン酸キナーゼ(PK)遺伝子の転写はエンハンサーユニットを介してインスリン/グルコースにより促進される。このユニットのLIに結合するHNF1とLIIに結合するNF1ファミリータンパク質が相乗作用を示すかどうかをレポーターアッセイで検討した結果、4種類のNF1ファミリータンパク質のNF1A、NF1B、NF1C、NF1Xはいずれもそれ自身では効果は認められなかったが、HNF1の作用を顕著に増強し、機能的に相互作用することが判明した。また、LIIIに結合する転写因子として、SHARP2を同定し、この因子が高グルコース食により肝臓で誘導されることを示した。 2、PKM遺伝子の転写調節にはボックスBに結合するSp1/Sp3とボックスCに結合するNF-Yが重要な役割を果たしていて、Sp1/Sp3はNF-Yを構成する3つのサブユニットのうちのNF-YAと物理的に相互作用することにより転写を相乗的に活性化することを示した。 3、3T3-L1脂肪細胞でのPKM遺伝子の発現はインスリンで促進されるが、この時にグルコースを必要としないことを示した。PKM遺伝子のインスリン応答性領域の一部が-2.2kまでの領域に存在することが示唆された。この時のインスリンシグナル伝達経路はPI-3キナーゼとMAPKKの両方が関与していること、セリン・スレオニン残基のリン酸化がより重要であることが示唆された。 4、M_1型PKは非アロステリック酵素で、他のPKアイソザイムと違いフルクトース-1,6-二リン酸によってアロステリック制御を受けない。この機構を検討した結果、432番目のグルタミン酸残基がフルクトース-1,6-二リン酸との結合を静電気的反発作用により妨げることで、アロステリック効果を阻害していることが判明した。また、肝がん細胞のM_2型の酵素活性は酸化ストレス条件下で変動しなかった。
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