研究概要 |
平成11年度は基礎的なデータを収集・蓄積するための調査・研究を行った。その結果、以下のことが明らかになった。 (1)新潟県の第三紀層泥岩地すべり多発地帯である東頸城地域の地質・地形調査を行った。地すべり斜面の傾斜は層準によって異なる。樽田層、須川層の泥岩を基岩とする地すべり傾斜は5〜10°に集中し、田麦川層泥岩の地すべり斜面の斜面の傾斜は10〜15°に集中する。同じ第三紀層であっても、各層準毎に泥岩の物性が異なると考えられる。 (2)末風化の泥岩の粉体と風化した泥岩の粉体について、注意深く調整した試料を用いて、同一条件における単純せん断試験・リングせん断試験を行った。風化した泥岩のせん断抵抗角の方が大きくなる結果となった。化学風化作用によって鉱物組成が変化したことが大きなせん段抵抗角を示す要因と考えられる。一般に見られる風化した岩石・土砂の強度低下は、風化に伴う物質の変化ではなく、密度低下が密接に関係していると示唆される。 (3)長野県北部稗田山崩壊地においてSr同位体比を指標として安山岩の化学風化作用について考察した。地表水のSr同位体比は,0.7078〜0.7082の範囲内にあり,これは崩壊地周辺にみられる安山岩のSr同位体比の範囲内にある.このことは,地表水のSrが,崩壊地内部の安山岩の風化によってもたらされたことを支持する。 (4)第三紀層海成泥岩の化学風化作用においては、黄鉄鉱の酸化に起因する水-岩石相互作用が支配的である。一方、稗田山崩壊地においても変質安山岩に含まれる黄鉄鉱の酸化が安山岩の化学風化作用を支配している。 平成12年度は、岩石・土砂の化学風化過程と密度・力学的性質の変化に着目した研究を実施する。
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