研究課題
龍良照葉樹林の原生老齢林に設置された4haプロットにおいて、1997年に生存していた胸高直径5cm以上の約140個体のシイ成木の遺伝子型を6座について解析したところ、遺伝的多様性の指標であるヘテロ接合度(He)の平均は0.824、有効な対立遺伝子数(Ne)の平均は6.112であった。後述の1ha二次林プロットと比較するため、老齢林4haを4分割して各1haについて計算した後に平均した値は、He=0.815、Ne=5.799であった。次いで、林分内における対立遺伝子の空間配置の相関の指標として、10mごとの距離階級に区切ってMoranのIを算出した結果、比較的大きな正の相関があることが示唆された。代々自然更新が行われた老齢林ではそれぞれの時点での母樹を中心としたパッチ状の遺伝構造があると考えられる。老齢林に隣接した二次林で、1haプロットの毎木調査が1999年に行われ、胸高直径5cm以上のシイ成木が約370個体生存していた。このうち約270個体について6座の遺伝子型を解析し、He=0.803、Ne=0.581が得られた。二次林における遺伝的多様性の量は老齢林とさほど差がないことが示唆された。また、MoranのIはそれぞれの距離階級について0.005、0.003、-0.003、-0.000、-0.001であり、ほとんど空間配置の相関がないことが明らかとなった。この二次林においては、いったんかなりきれいに森林が取り払われた後に、周囲から入ってきた種子がランダムに配置・定着して更新が行われていると考えられる。老齢林4haプロットのコア1haにおいて、高さ30cm以上の稚樹の調査が1998年に行われ約1200個体が生存していた。このうち約650個体について4座の遺伝子型を解析し、4haプロットの成木を対象に親個体の推定を行った。少なくとも片親が検出されたのは約120個体で、他は未確定となった。
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